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僕はそれを聴いて驚いた。
よくそんなの、覚えていたものだ。
「実はそれ、僕が適当に作ったんだ。歌詞はまだ無いけどね。メロディーだけさ」と僕は照れた。
そんなの、まだ誰にも聴かせた事ないし、ましてや聴いてもらおうなんて思った事もなかった。
そもそも歌なんて、僕の自己満足の世界でしかなかったからだ。
「今度、完成したら一度聴かせてよ」里香はそう言って立ち上がった。
「ちょっと寄るところがあるから、先に行くね」と里香は自転車にまたがり、行ってしまった。
僕はただ、里香の後ろ姿を見送っていた。
「しまった!聞くのを忘れた」
何処の学校なのか聞くつもりだったのに、歌の話に頭がいっぱいですっかり忘れていた。
まあ仕方ないや、次の機会だ。
でも、それよりも一つ目標が出来た。
それはこの歌を完成させる事だ!
そして早く、その歌を里香に聴かせてあげたい。
そう思いながら、僕は帰り道を急いだのであった。
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