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夏の虫が、鳴いている。遥か遠くから、近くから、この耳に届く。
「あんたの、せいだ……!」
暗い空。草が生い茂る川原に、人が独り。
「あんたがいけないんだよ。あんたがいなければ……!」
足元に置かれているものを見て、その人物は呟く。
●●の小さな呼吸は、虫と一緒に奏でるように、深く一定のリズムを刻んでいる。
●●はゆっくりと、鉈を振り上げる。
そして重力に任せ、突き刺す。
「これで報われる」
一回。
「これで救われる」
二回。
微笑む。泣く。そして、力無く鉈を落とす。
「ああ、はは……。誰か、私を……ーー」
●●の呟きは、虫の音によって掻き消された。
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