プロローグ

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ーー探偵。なんて怪しい響きだろうか。 探偵と聞いて思い付いたのは、浮気調査や殺人事件を33分で解決する探偵の孫で、眼鏡の小学生の姿でよくbarにいるというものだ。 断然警察の方が信頼できる。その考えが顔に出ていたのか、老人は察したように付け足した。 「いやいや、あの子は本物じゃぞ?何でもかんでも見つけてくれる。この前、わしが入れ歯をどこに置いたか忘れたときも、すぐに見つけてくれた」 ニカッと笑い、自らの歯を指差す老人。 「それは凄いですね。見つからなかったら行ってみようかな」 完全に社交辞令だった。が、老人はうんうんと頷き。 「場所はすぐそこの角を曲がった所じゃ。近いから案内してやろう」 思った以上に近かった。そして、逃れられなくなった。 断ろうとも思ったが、今入っている現場はまだ長い。あまり隣人との関係を悪くしたくない。 「本当ですか?じゃあ……お願いします」 正直乗り気ではなかったが、そう言ってしまう性格なのは自分でも分かっていた。 老人は「任せておけ」と言うと、よぼよぼと歩き出した。昌弘は溜め息をつき、ついて行く。 ーーなんでこんなことになってしまったんだろう。今頃家で、冷え冷えのビールを飲んでいるはずだったのに。 鍵を掛けなかった自分が悪いのか。これは、もっと人を疑えという神からのーー。 「ここじゃよ」 思った以上に近かった。物思いに耽る間もなく到着した。 「あ、これですか?」 昌弘は驚いた。ただの一軒家にしか見えなかったのだ。 しかし、不親切なぐらい小さく掲げてある【御柳探偵事務所】の看板が、その存在を主張する。 老人がインターホンを押すと、中から元気の良い声が聞こえた。
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