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玄関の扉が開くと、ひょこっと可愛らしい女の子が顔を出した。
高校生くらいだろうか。背中まである黒髪はサラサラで、幼い顔立ちはテレビで見るタレントより可愛らしい、というのは言い過ぎだろうか。
その女の子は昌弘達と目が合うと、太陽のような笑顔を見せた。
「こんばんは!」
「ほっほっほ。こんばんは詩織ちゃん、久しぶりじゃの。イチ君はいるかい?」
老人が言うと、女の子は察したかのように昌弘を見た。
詩織と呼ばれた女の子が、家に上がるよう誘導するが、老人はそれを拒む。
ーー待て。俺の意見は聞かないのか。
女の子がイチなる人物を呼びに行ったとき、老人は昌弘に言った。
「言いたいことは分かる。話すなら、腰を落ち着けて話すべきじゃろう」
「まぁ、いいですけど」
明らかに不満そうな顔をしている昌弘を見て、老人はニヤニヤと笑みを浮かべる。
「安心せい。詳しい説明など不要じゃ。ただ一言、無くした鍵を見つけたいとでも言えばよい。警察に言うのは、それからでも遅くはないじゃろ」
「は?」
老人が意味深に笑うと、玄関先が騒がしくなる。ドタドタという足音が近付いてくる。
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