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電気をつけると、見慣れた部屋が姿を現した。綺麗に整頓された8畳の部屋は、帰ってきた主人をいつも通りに迎え入れる。
「つ、疲れたー……」
午後7時。自室があるアパートに帰ってきた詩織は、服も着替えずにベッドに倒れ込んだ。
ゴロンと仰向けになり、部屋の天井をぼんやりと見つめる。
天井に左腕を伸ばしてみた。疲労が溜まった細腕を見て、今日の出来事を振り返る。
ーー今日は朝から色々なことがありすぎた。
三谷の依頼から始まり、二人の刑事と出会い。
久美恵と出会い、捜索の依頼をされ。
三谷が殺人犯と知り、情報を求めて現場に赴く。
1日だ。1日でこれだけ動けたのだ。人間やれば出来るものだなと詩織は思う。
そして最後に久美恵と話せたのは良かった。自分にとってもリフレッシュになった。
多少なりとも元気な姿を見れて、嬉しく感じた。
明日の夕方、また寄ってもいいかと聞かれた。勿論了承したが、今になってしまったと思う。
「明日の講義、午後からじゃん……」
枕元に置いてあるカレンダーを見て、ため息をついた。
明日は月曜日だ。大学生の詩織が、勉学に励む日でもある。
休もうかなと考えるが、払っている学費のことを考えるとそんなわけにもいかない。
そして久美恵のことを考えると、事務所を休むわけにもいかない。
ーーなら、午前中に動くか。
詩織はのそりとベッドから起き上がり、鞄から取り出したパソコンを起動させた。
少しでも効率のいい動き方をするために、今から情報を集めようと思ったのだ。
ニュースを見てみると早速、新しい情報が飛び込んできた。
「金曜日から捜索願いが出ていた少年が、山中でバラバラの状態で発見された……」
詩織は頭を抱える。これも彼なのか。それとも模倣犯なのか。
「……三谷さんだと仮定しよう。となると、金曜日。仁美ちゃんより前に殺害していた。みくりちゃんよりかは、後か……」
少年は小学生。通っていた小学校の名前が出ていたのは運が良かった。
なかったらひとつずつ探していたところだ。詩織は、その学校の電話番号を控える。
明日の朝電話してみて、許可が取れたら行ってみようと思った。
「よし。お風呂入ろう……」
詩織はパソコンを閉じ、眠い目を擦りながらフラフラと風呂場に向かった。
風呂から上がると、電気を消す間もなくベッドに倒れ込み、そのまま就寝した。
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