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「お待たせしました!」
扉を開けたのは、先ほどの女の子。彼女が扉を開け待機していると、奥から茶色いパーカーを羽織った若い男が歩いてきた。
20代前半か、25を越えたところだろう。怪我でもしたのだろうか。左目にしてある眼帯が、垂れた前髪から顔を覗かせていた。
「おお!イチ君!」
「こんばんは。このような格好で申し訳ございません」
老人が手を挙げると、イチなる青年は丁寧に昌弘に挨拶をする。性格は良さそうだ。
「それと、そちらのじじいが迷惑をかけてしまったようで。本当に申し訳ありません」
いや、やはり性格は悪そうだ。彼が頭を下げると、老人は豪快に笑う。
「がっはっは!半信半疑だったからのぉ。ひとつ、【無証の探偵】というものを見せてやってくれんか?パパッと解決して、どや顔というものをしてみたい」
「なんで源さんがするんですか。誇れるようなものでもないんですがね」
青年は困ったように頭を掻くと、着ているパーカーの襟を正した。
もしかして、営業時間外だったのではないか。青年の格好を見てそう思う。
昌弘は、これは悪いことをしたと罰が悪そうな顔をした。
しかし青年は、昌弘に向き合うと爽やかな笑顔を見せ。
「初めまして。私は、御柳一知と申します。本日は、我が探偵事務所をご利用いただきありがとうございます」
青年が丁寧に頭を下げたので、昌弘も釣られて頭を下げる。
青年は頭を上げると、先ほどから隣に立っている女の子に手を向けた。
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