プロローグ

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「分かりました」 「え!?」 いそいそと眼帯を戻す青年は、少し苦笑いをしていた。 「お弁当袋の中を調べてみてください」 青年はそれだけ言った。昌弘は現在、手元に弁当袋は持っていない。 「良かったのぉ。盗まれてなくて」 「いやいや、え?探しましたよ?」 中には確かに無かった。そもそも弁当袋の存在は、一言も口にしていない。 ニヤニヤと肘でつついてくる老人に抵抗しないほど、頭が混乱している。 確かに無かったーーはず。 「論より証拠ですね。行きましょう」 青年は黒いサンダルを履くと、先導するよう外に出た。3人はそれに続いて外に出る。 数秒で到着した現場は、来る前と何も変わっていない。 しかし、車に積んである弁当袋を前にした昌弘の心境は、とても複雑だった。 あればいいとは思うが、盗まれたと騒いだ手前、出てこなければいいとも思う。 これで出てきたら相当恥ずかしいなと、心の中で自嘲する。 弁当袋に手を伸ばす。こんなに緊張したのは、娘の結婚式以来だ。 果たして、弁当袋の中に手を突っ込んだ昌弘が触れたのはーー触り慣れた、金属の感触。 「あったようじゃの」 恥ずかしさで顔が赤くなるのが分かる。無意識に入れてしまったのだろう。 入れるはずがないという先入観が働き、袋の中を軽くしか探さなかったのか。 「ありました……」 引き抜く手が、とても重く感じた。 鍵に付けている、生意気そうなリスの台詞付きのキーホルダーが顔を見せる。 『まじっすか』と書かれた台詞は、まさしく彼の心を代弁していた。
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