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「見つかって良かったです。では、私達はこれで」
一礼して帰ろうとする青年を、昌弘が止めた。
「あ、ありがとうございます!調査費?は、おいくらですか?」
探っていた弁当袋から、財布を取り出した昌弘。
しかし青年は、ヒラヒラと手を振ると、その受け取りを断る。
「このくらい構いませんよ。探せばそのうち見つかったでしょうから」
「しかし……」
渋る昌弘に、青年は笑顔で言う。
「では『無償の探偵』らしく、初回無料ということで。また何かあったら、是非ご贔屓してください」
「……分かりました」
ここまで言われたら、引き下がるしかない。今度、簡単な依頼ついでに菓子折りでも持ってこよう。
「証拠要らず……。無証の探偵か」
3人と別れ、帰ろうと車に乗り込んだ時、昌弘は呟く。
彼を初めて訪れた依頼人は、口を揃えてこう言うに違いない。
「まるで、答えが見えているようだった」
ふと自分が本気で口にした台詞が馬鹿らしくなり、「なんてな」と最後に呟いた。
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