~100~

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夏の虫が、鳴いている。遥か遠くから、近くから、この耳に届く。 「あんたの、せいだ……!」 暗い空。草が生い茂る川原に、人が独り。 「あんたがいけないんだよ。あんたがいなければ……!」 足元に置かれているものを見て、その人物は呟く。 ●●の小さな呼吸は、虫と一緒に奏でるように、深く一定のリズムを刻んでいる。 ●●はゆっくりと、鉈を振り上げる。 そして重力に任せ、突き刺す。 「これで報われる」 一回。 「これで救われる」 二回。 微笑む。泣く。そして、力無く鉈を落とす。 「ああ、はは……。誰か、私を……ーー」 ●●の呟きは、虫の音によって掻き消された。
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