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幾つめかもわからなくなった砂山を越えて、
再び地平線を見つめる男。
そのアイに飛び込んできたものは、何かの反射光。
それがなんだか男にはわからず、ただそこに何かがあると信じ、男は走り始めた。
世界は希望を捨てていなかったのだと、転げんばかりに男は走る。
煙を上げて男は走る。
遠目に見えていたそれが、徐々に徐々に大きくなっていき、男の目にもそれがなんだか認識された。
それは全周囲ガラス張りのドームであった。
そのガラス屋根の大半は砕け、その大半は砂に侵食されてはいたが、それでもそこに確かに感じる人の痕跡に男は喜び、走り続けた。
男は恐る恐るその腕をガラス壁に伸ばす。
注意深く、いとおしく、その壁に腕を伸ばす。
その、砂まみれの、ガラスに写っていたものは、
機械仕掛けの人形であった。
「うあ、うあああああ・・・。」
機械でできた声帯が、合成音を奏で出す。
「うああああ・・・」
その瞳の部分から流れるものは、黒ずんだオイル。
精巧に人を模した機械人形がそこには写っていた。
その日世界が捨てたもの。
それは。
完。
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