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あの日世界が捨てたもの。
それは、歌。
歌うことを忘れた男は、無言で歩き続けた。
幾万もの歌に溢れていた世界のなれの果てを男は歩き続けた。
奇跡的に滅亡を潜り抜けてしまったただ独りの男は、己の運命を呪い、ひたすらにさ迷い続ける。
シェルター。
崖。
崩落。
砂。
長い長い年月。
男は記憶を捨てた。
今彼に残っているものはそれの残骸。
覚えていれば、歩みは止まる。
絶望を思い出せば、動けなくなる。
だから男は記憶を捨てて、歩き続けた。
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