日下部君との出会い(白石七海)

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日下部君との出会い(白石七海)

 四月。勝川小学校に入学。一年一組。  この年の一番、大きなニュース。  日下部健(くさかべけん)君と同じクラスになったこと。  一番最初の出会い!  いまでも覚えてる。  日下部君だって、きっと覚えてるよね。  体育館で入学式。  たくさんの生徒や先生。父兄・・・  わたし、こわくて泣いた。  父兄の席に駆け出し、母を探した。  「なに、してるの?」  母に怒られた。  「戻りなさい」  先生の声!先生も怒ってる。  生徒たちがぜんぶ、わたしの方を見てる。  父兄たちがぜんぶ、わたしの方を見てる。  頭の中がグルグル回る。  「見てよ」  「一年生なのに・・・」  「入学式。終わらないよ」  みんなの声が、頭の中を駆け巡る。  「バーカ!」  笑い声。わたし、この学校にいたくない・・・  泣きながら教室に入った。  席に着いた後も、机に顔をつけて泣いてた。  顔を上げたくなかった。  「ごめんね」  泣き出しそうな声がした。  わたし、知らん顔してた。  「ごめんなさい」  もう一度、本当に泣きそうな声が聞こえた。  わたし、やっと顔を上げた。  日下部健君がすぐそばに立っていた。隣の席だった。  恥かしそうで、泣き出しそうで、でもあたたかくて、やさしい表情だった。     
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