日下部君との出会い(白石七海)

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 緊張した表情で、不自然に笑ってる。  「日下部健っていうの。よろしく」 って、すっごく小さな声で言った。   顔、真っ赤だった。  カメラに撮っときたかったな。  日下部君の恥ずかしそうな顔見てたら、わたしね。  (なーんだ。恥ずかしくても、顔、真っ赤でもいいんだ) って思った。  わたしも、  「白石七海。よろしく」 って下向いて挨拶した。  でも、顔、そんなに真っ赤じゃなかったよ~。  日下部健君。  わたしと一緒。    おとなしくてあまりしゃべらない。  でもとってもやさしい子。  いつも本を読んでた。  忘れないよ。  四月十四日朝。  日下部君、覚えてるかな。  一時間目の図工の教科書、忘れたことに気がついた。  どうしたらいいか分からなかった。  青い顔で席に着いてた。  涙が出て来た。  見られたくなくて下向いてた。  そうしたら日下部君。本を閉じて、  「ねえ、どうしたの?」 って小さな声で話しかけてくれた。  心配そうな顔だった。  自分まで泣き出しそうだった。  もうひとつ・・・  日下部君の顔、真っ赤だった。  「図工の教科書、忘れちゃった」 って、わたしも小さな声で答えた。      
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