日下部君との出会い(白石七海)

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 日下部君まで、すごく困った顔になった。  しばらくすると席立って、教室を出て行った。  どこ行ったんだろう?  ホームルームのベルが鳴り始めた時。  あわてて帰ってきて、わたしの机に図工の教科書を置いた。  「はまじまゆう」 って名前が書いてあった。  他のクラスの友だちに借りてくれたんだ。  後で分かったこと・・・日下部君の親友だった。  わたし、嬉しかった。  日下部君の心配そうな顔が嬉しかった。  日下部君の困った顔が嬉しかった。  わたしのことなのに・・・  それからもずっと同じだった。  小学、中学、高校、いつだって同じだった。  なにか困ったことあると、そっと、  「ねえ、どうしたの?」 って小さな声で話しかけてくれる。  その時の心配そうな顏が大好きだった。  「声かけていいのかな」 ってはにかむ様子が大好きだった。  日下部君知ってるのかな。  わたしの気持ち・・・  小学、中学、高校。いつだって同じだった。  なにかあると日下部君に助けてもらった。  わたしたちふたりのすてきな時間。  こっちから声かけなくたってよかった。  日下部君が気づいてくれた。  解決すると、ニコッと笑いかけて、また自分の席に戻って本を読み始める。  その時の真剣な表情が大好きだった。  席、どんなに離れてても気づいてくれる。     
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