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だれとも話せなかったこと(白石七海)
「お母さんも児童劇団に入ってたんだ。お芝居の勉強するんだよ。
テレビに出れるかもしれないよ」
それがいいことなの?
「七海の好きな『嵐』にだって会えるかも!」
お母さんもわたしの背中を押してくる。
「いろんな人に会えて友だちになれるし、元気になれるよ、
お母さんも楽しかったよ」
お母さんの入ってた児童劇団の講師が、いま、「ミューブ」って児童劇団の代表だそうだ。
「お父さん。前にこの劇団で音響や照明のアルバイトしてたから知ってる。
いい劇団だ」
よく分からないまま、児童劇団に入ってお芝居を勉強することになった。
その年の後期入学生。「低学年、幼児の部」だった。
稽古場で入団式が行われた。
広いお部屋。
小学校一、二年の子、わたしと同じくらいの年齢の子が十人。
稽古場の中央に並んで立たされた。
劇団の子たちが、わたしたちの前に座ってる。四十人くらいいた・・・
こんなにたくさんの子・・・いっぺんに見るのは初めてだった。
隣の子が、ジロジロわたしを見つめてる。
わたし、どっかおかしいんだろうか?
長い間、病院に入ってたから、顏とか髪の毛とか変になってるんだろうか?
変な服、着てるんだろうか?お母さんが選んだのに・・・
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