だれとも話せなかったこと(白石七海)

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 座ってる子たちが、わたしの方見てヒソヒソささやきあってる。  (どうして?わたし、なんか変なの?なにがおかしいの?)  だれも教えてなんかくれない。  ささやきだけが大きくなる。  みんな、わたしだけ見てる。  変な顏してる。  笑ってる。  怒った顔してる。  だからなにがおかしいか、教えて。  お母さんに手伝ってもらって、ちゃんと直すから。  「次は白石七海さん」  拍手。  なんで?なんでなの?  わたしだけ拍手の音が小さい。してない子だっている・・・  わたしのこと、いやがってる。  「みんなに挨拶してください」  わたし、なに、話したらいいか分からない。  どうすればいいの?  「挨拶して!」  なに話せばいいの?  「早く。次の人もいるから・・・」  ざわめきが大きくなる。  わたしをにらみつけてる子までいる。  わたしを指さしてる子。  みんな、わたしのこと、怒ってる。  でもなに、話したらいいの?分かんない・・・  みんなの声が、わたしの体をつぶしていく・・・  みんなの声が、わたしの心をつぶしていく・・・  だれにも歓迎されない児童劇団の入学式。  この劇団に友だちなんかいなかった。  どう話しかけたらいいのか分からなかった。  ほとんどしゃべらないわたし。  ちがう!  しゃべれないんだ。  みんなの顔見てるのがこわくてしかたない・・・     
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