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エピローグへのプロローグ
白石さんのお父さんから電話だった。
「七海の言う通り、あの家は日下部君に譲りたいと思っていてね。
手続きの費用とか、日下部君の負担にならないようにしたい。
受けてくれるね」
最後の一言が響く。
すぐ次の話へ移る。
「七海は自分のものすべて、日下部君に渡して欲しいと言った。
ただね。親として、少しでいいから、七海のものを持っていたいという気持ちはあるんだ。
分かってくれるかな。
今度来た時、七海の部屋のものを、一緒に確認したいんだ。
日下部君をつらくさせて申し訳ない。だが頼むよ」
一週間後。
白石さんの部屋は一年ぶりだった。
白石さんのお父さんが一冊の本を差し出した。
「一年経ったら、日下部君に渡して欲しいと言われてたんだよ」
表紙の折れ曲がったボロボロの本。発行日は、ぼくらの誕生日よりずっと前。
作者は、「心霊研究家・岡外俊哉」ってある。
『あなたの知らない世界・わたしは四十九日まで、毎晩、死者に会った!驚きの目撃談』
本にカードがはさんであった。
見覚えある文字だった。
<健へ
四十九日までの健とわたしとのデートのこと。
一緒に思い出そうよ。
話そうよ。
七海>
なにも見えなくなった。
本を手にしたまま・・・
大声で泣いた・・・
お父さんがそばにいるのに・・・
「昔、わたしが買った本でね。七海がいつ見つけたのかわからない。
この本を読んで、日下部君との最後のデートに賭けてみたんだろうね」
お父さんの声は震えていた。
そうだ。ぜったい忘れない日々。
君と・・・
ずっとずっと思い出すんだ・・・
ずっとずっと話すんだ・・・
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