ひとりぼっちだった時・・・(白石七海)

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ひとりぼっちだった時・・・(白石七海)

 白石七海の記録ノート  『高蔵(たかくら)高校二年二組 白石七海(しらいしななみ)が日下部健(くさかべけん)君と過ごした十七年』(小さい頃から小学時代)    わたしが覚えている最初の光景・・・病院のベッド。  いつのことなんて分からない。  ずっと同じところにいたんだから・・・  白い服を着た男の人や女の人がこわい顔でわたしに話しかけてくる。  同じ格好の人たちが集まって、深刻な顔でなにか話してる。  いま、考えると病院のお医者さんや看護士の人たち・・・  一歳の時に病気が見つかり、小学校に入る直前まで入院していた。  だからわたしの記憶。  ひとりぼっちって言葉がぜんぶ。  両親が付き添ってた。  病院の医師や看護士も回りにたくさんいた。  その人たちといろんな話をした。  でもわたし、ひとりぼっちの記憶しかない。  回りの人たちがわたしを指さす。  わたしの方に顔を向ける。  わたしに話しかけ、答えを聞くと、首を振ったり腕を組んだりしている。  深刻な表情で話し始める。  「・・・だめみたいです・・・」  なにがだめなんだろう・・・  「・・・ちょっとこの数値では・・・」  わたし、なにか悪いことしたの?  「・・・ムダかもしれませんが・・・」  「・・・初めてだ。こんなこと・・・」  悪いことしたんなら教えて。そんなふうにこっちを見ないで・・・  わたし、どうしたらいいの?  時々、やさしい顔が向けられる。  そんな時は、  「いまから検査をする」  「病気をよくするから、別の部屋、行こうね」 って話が続く。  痛い!苦しい!  長い時間が続く。  回りの人たちと話をする度に、悲しくなった。苦しくなった。  いなくなりたいって思った。  そばにいたら・・・ただそばにいてくれるだけでいい。  心が安らかになる。元気が出てくる。  一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒にいろんな話をする友だちは、そばにはいなかった。  だから友だちが欲しかった。  退院して自宅療養の期間も終わった頃。  小学校入学を来年に控えた十一月のことだった。  お父さんが「児童劇団」に入ろうってわたしに言った。
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