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「やめろ。」
自分で思っていたよりも低い声が出た。
「シマちゃん?」
山口の力が緩んだすきに、靴を脱いで急いで部屋へとあがる。
「シマちゃん、どうしたの?怒ってる?」
怒ってる?いや、怒ってはいないと思う。いつもの場所、ベッドとこたつにもなるテーブルの間に座って膝を抱えた。
「シマちゃん、どうしたの?」
当たり前のように、小さなキッチンでお湯を沸かしインスタントコーヒーを入れた山口はそれをテーブルに置くと俺の隣に座った。
伸ばされる手から逃げるように両手を背中へと隠す。触れられてしまったらきっとまた許してしまう。何もなかったように今日を過ごして、また考えて苦しくなってしまう。
「シマちゃん、俺の事嫌いになった?」
首を振ったら涙が落ちそうになったので、顔を抱えていた膝にうめた。
「言ってくれなきゃわかんないよ…。」
山口が何も言ってくれないから苦しくなっているのに、酷いと思ったら溢れてくる涙に我慢ができなかった。鼻をすすると「泣かないでよ…。」と横から抱き込められた。
それでも、苦しくて息ができない気がして涙が止まらなかった。
「ゆっくりで良いから話して。」
優しい声にイラつきを覚え、何もかもをぶつけてしまいたい衝動にかられた。
「山口の…山口のすきになんの意味があるのか、わかんない。」
言い出したら止まらなくなりそうで言いたくなかったけど、言ってみれば簡単なことだったと思った。止まらないけれど、このまま息苦しいのは嫌だし、言ってしまえばいいと自棄になっている気もする。たとえこれで嫌われてもそれでいい…かな?嫌かな…。今はわからない。
「山口が、だいすきって言うのも、すきって言うのも、わかんなくて苦しい。何で俺に触るのかもわかんない。何でだいすきとかすきっていうの?なんでさわるの?わかんなくて、こわい。」
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