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「俺もこわい。」
山口の声に顔を上げると、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔を袖で拭いてくれた。
「シマちゃんに好きが届いても届かなくても怖い。触ったらもう離したくなくてずっと触れていたいの凄い怖い。シマちゃんへの好きが毎日膨らんでいくのこわい。…だからって、逃げてシマちゃんこわがらせちゃったんだよね。ごめん。」
手を伸ばしてテーブルからティッシュを取ると「ごめんね。涙止まらないね…。」と顔を拭いてちょっと笑った後顔を歪めた。
「でもね、今ちょっと嬉しい。ごめんね…。シマちゃんが俺の事で悩んだり泣いたりしてくれるの凄い嬉しい。シマちゃんの中が俺でいっぱいになったらって思うよ。」
「…それが、山口の好きの先?」
山口は俺が好きだから、俺が山口でいっぱいになったら嬉しい。という事なのだろうか。
「好きの先か…難しいね。けど、俺はシマちゃんが好きだからシマちゃんに好きって伝えてたよ。こわいから先は考えたくなかった。けど、考えると…。」
「と?」
「シマちゃんに俺を好きになってもらいたい。かな。」
苦しそうに顔を歪める山口は、息苦しいと思っていた自分と同じかもしれないと思った。という事は、俺は山口が好き?息苦しくてこわくて嫌だと思っていた感情は何なんだろう。それは、山口がはっきりしないからだ。何で『すき』って言うかわからなかったからだ。
「俺も好き…かも…。」
小さな声だったけど、部屋中に響いてしまった気がして恥ずかしくなったけど、「え?ほんと?」と首を傾げた山口に触れたくて両手を伸ばすと、それに気が付いた山口が俺の両脇に手をいれ、よいしょ。と少し持ち上げ引きずるように胡坐をかいた脚の上に乗せられてしまった。
恥ずかしかったけれど、山口に触ることが出来たので満足した。
俺は山口が好きだから、触りたい。
うん。しっくりくる。
「好きって言ってシマちゃん洗脳しちゃったみたいでごめんね。でも、大好き。」
そう言って抱きしめてきた山口に身を任せるように体重を乗せると「でも、まぁいっか。シマちゃん可愛いし。」と泣いておそらく赤くなっているであろう目元に唇が触れた。
山口は俺が好きだから、好きと言って触れていた。
わかってみれば簡単な答えだったなぁ。と山口の温かさを感じながらゆっくりと目を閉じた。
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