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独白
『青野青子様
愛しい貴女がこの手紙を見ているということは、僕らの恋は終わったということ。そして僕はこの世にいないということ。最期に僕は何を思って死ぬのでしょうか?愚問ですね、最期のひと呼吸まで貴女との思い出を、笑顔を思い浮かべることでしょう。
あの日のことを覚えていますか?青い海、青い空の下で交わした誓いを。僕は奇跡だと思いました。好きな人が自分を好きになってくれたなんて。あの夜の誓いの言葉は、今でも鮮明に覚えています。神様が僕達の許されざる恋を許してくださった……そんな気がしたのです。
それからは楽しい日々でしたね。色んなところに行ってははしゃぐ貴女を見て、僕はとても幸せでした。特に二人でやった花火は一生の思い出です。でも、少しずつ影が迫っていました。双子なのに貴女の気持ちが判らなくなったのです。焦りました。そして気づきました。貴女は"大人"になったのだと。そして僕は誓いの夜の日から止まったままだと。
貴女との甘美な時間を失いたくなくて、影に背を向け見ないフリをしていました。その間に貴女はどんどん違う世界に行ってしまいました。二人で歩いていたはずの道はいつしか平行線になり、互いの姿も見えない程遠くなってしまいました。もう、戻れないことを悟りました。
僕は、いつか来る別れを待ちながら、それでも貴女を愛してやまなかった。だから決めていました。貴女との繋がりが完全に切れたら、死のうと。僕の時間はもう進まない。それならば、せめてこの時間を永遠のものにしたかったのです。身勝手な行為でごめんなさい。でもそうするしかありませんでした。
もし貴女が自責の念に囚われているのなら、どうか時間を大切にしてください。止まらないでください。僕のようにならないで、他の幸せを、世界を見つけてください。
最期に、本当にありがとう。禁断の恋の蜜を四年も味あわせてくれたことに。そしてごめんなさい。僕は逝きます。貴女の顔を歪ませることを許してください。
それでは、お元気で。願わくば来世でも貴女と双子でいられますように。』
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