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「リューマ、早く来いよっ!」
「ちょっと待ってくれよっ!」
幼馴染みの『ケント・カーミラ』を追いかけながら俺『リューマ・タヒト』は村の広場を目指して走っていた。
此処は王都から離れた何処にでもある小さな村『メラル村』。
今日は今年で15歳になった若者達が王都に行き『スキル』を貰う日だ。
既に待ち合い場所には同級生達が来ていた。その中で幼馴染みの姿を見つけた。
「『カナ』、『アイカ』、もう来てたんだ。」
「勿論っ! 今日を楽しみにしていたんだから♪」
「どんなスキルを貰えるか楽しみだね♪」
幼馴染みの『カナ・リキュール』と『アイカ・ミラール』もわくわくしていた。
俺とケント、そして、この二人は家も近くて小さい頃から遊んでいた。
ケントがリーダーで、僕達は冒険者ごっこをしていた。
四人でパーティーを組もう、と約束していた。
「全員集まったな。それじゃあ王都に出発するぞ!」
王都まで馬車で運んでくれるおじさんに言われ俺達は馬車に乗り込んだ。
ガタガタ揺れる馬車の中では皆ワクワクしながらお喋りが止まらなかった。
「どんなスキルを貰えるかな? やっぱり勇者が良いよな。」
「俺は戦士だな。力には自信あるから。」
「私は魔法使いが良いなぁ。」
「私は聖女とか僧侶がいいな。」
皆、やっぱり冒険者に憧れている。
言い方は悪いんだけど、メラル村は何にもない田舎だ。
年頃になれば王都に働きに出る若者が多くて、村には子供や老人しかいない。
村には特に娯楽もなくて働けるとすれば農業や木こりぐらい。
これも若者が王都に出ちゃう理由の一つだ。
正直、俺も村にいるより外の世界に出てみたい。
だから、『村人』になると一生村で生活していかなければならなくなる。
流石にそれだけは避けたい。
皆でわいわい話ながら、馬車は王都へ向かっていく。
この時が一番楽しかったし、気分が高揚していた。
だから、スキルを与えられた時の落ち込みは本当に凄かった。
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