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「雪、ゆき、金平糖。ふわふわの雪に、キラキラの星・・・」
降り積もった雪の上で、記憶に残る不思議な詩を口遊む。
誰が作った詩かも、何かの絵本の一文なのかもわからない。
失くした記憶の中の、ほんの一部。
雪 ゆき 金平糖
「”どうして私は、ひとりなの?”」
え・・・。
重なった声に驚いて目を開けると、太陽を遮るように影が出来た。
「雪の上で昼寝とか、正気じゃないだろ」
私の上で揺れる、濃紺のコートの裾を辿っていくと、相変わらず育ちの良さが滲み出た、整った顔を見つけた。
ポケットに手を入れて立つ伊槻が、雪の上に仰向けで寝転ぶ私を見下ろす。
「何しに来たの?」
「別に」
「帰ったら?」
「来たばかりだろ」
身体がひんやりと冷たくなっていくのに、心臓だけが熱い。
物語はもう、おしまいだ。
「花純」
「・・・伊槻」
「愛してる」
涙が、零れた。
ぽろぽろ頬を伝い、雪と一緒に消えていく。
だけど返事は一つも出来なくて、私は何度も頷いたんだ。
それは、口に出すことも許されない想い。
物語はいつだって、ハッピーエンドとは限らない。
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