金平糖が溶けた

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両親の葬式にも出られないまま、病院で治療を受け続けていた私を、雪村が迎えに来たのは、今日と同じ、雪の降る朝だった。その傍らには、私と同じ7歳の伊槻がいた。 だけどその日の事はあまり覚えていない。 それどころか、事故以前のことを覚えていない。 頭を強く打った私は、それまでの記憶を失くしてしまっていたのだ。 だから全ては、現在の父である雪村や、世話係の百恵さんから聞いた話。 それから、伊槻。 病室に来た伊槻を見たときに、この子を知っていると思った。 どこの誰かもわからないのに、知っていると思った。 そんな私に伊槻は、「金平糖あげる」と手を差し出した。 どうしてそんなものをくれるのか、ベッドに座る私は不思議で仕方なかった。 だから目の前の綺麗な男の子に、「どうして?」と尋ねた。 すると伊槻は「花純ちゃん、これ好きでしょう?」と笑って見せた。 あの日から、私と伊槻は兄妹になった。
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