宅配人

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今日は僕の休日 世間は平日で仕事をしている人たちで溢れている 久しぶりに街をぶらついていた ふと遠くに目をやると貴女が歩いてきていた 思いも寄らない出来事に僕の心臓の鼓動は加速した 僕は立ち止まり 貴女から目が離せなかった 薄めのブルースーツに高いヒールを履きこなし 大きなバッグを肩から下げて いかにも仕事ができます、といったような姿 どうしよう 声を掛けてもいいかな? でも僕が声を掛けたところで誰か分からないよな…… そんなことを考えているうちに…… 貴女は僕の横を通り過ぎた だよな…… 月に数回しか顔を合わせない宅配人の顔なんか覚えているはずないか 僕は肩を落としゆっくりと歩き出した しばらく歩いていると後ろからカツカツカツッと ヒールで走ってくる音が聞こえたと思ったら 肩をトントンとされた 「やっぱり宅配人さん」 わざわざ戻って僕だと確認しに来てくれた? 私服だったから気付かなかった、と…… ネットで買い物したからまたお世話になります、と…… 貴女はニコッとして それじゃあ、と言って行ってしまった 覚えててくれた 貴女へ荷物を届ける日はそう遠くないんだ またすぐ会えるんだ
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