さようならのタイミング

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 花と緑が豊かなこの国は、長いこと戦争や、国王を巡った権力争いなどもすることはなく、国民も、平和な日々を過ごしている。  そんな国に生まれ、国の名産でもある色とりどりの花を育てている私は、しがない花農家の娘で、ある一部を除けば、ごくごく一般的な国民だ。 「……どうして?僕は今、ずっと好きだった君に、はからずも告白されたばかりなのに…なんで、さよならなんて言うのさ」 「……愛、しているわ」 「それなら、何で」 「私は、ただの国民の一人でしか、過ぎないのよ」  拒絶するように言った私をじっと見た青年、ダニーこと、この国の第二王子のダニエルが俯き、彼の金色の髪がサラ、と動く。  陽の光を浴びて輝く色は、いつ見ても綺麗で、この国が放つ光のようにすら、思える。  何故だか父が王と親しかったこともあり、しがない庶民の私は小さな頃から、ダニーと過ごす機会が多かった。  権力を振りかざさず、優しい人たちが多いこの国の王族に囲まれて育ったダニーは、心優しく聡明で、少しおっとりとしていて、お后様譲りの美貌を持つ。  剣術が得意な第一王子のお兄様と違い、身体の線は細いけれど、ダニーは弓術がお兄様よりも得意で、音楽や芸術を好む。     
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