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キュ、と一瞬また腕の力が強くなったけれど、ふいにグイ、とダニーが私の腕を掴んで自分の身体を離す。
「ダ、」
「聞いて」
真っ直ぐに、私の瞳を見たダニーの手が、腕から離れ、私の手へと移る。
「君に、聞いて欲しいんだ」
そう言ったダニーが、私の片手を持ったまま、スッ、と片膝をつく。
「父上も、母上も、兄も、皆、承知している」
「…ダニー……?」
立ち尽くした私を、私が育ててきた花畑を背に、片膝をついたダニーが見上げる。
彼は、何を、している。
彼は、何を、言っているの。
キュ、と私の手を掴んだ手が、ほんの少しだけ、震えている。
「ずっと、僕の傍にいて」
さっきまで、涙に濡れていた水色の瞳が、真っ直ぐに私を見つめている。
何よりも、聞きたかった答え。
聞いてはいけなかった、答え。
この先は、聞いてはいけない、答え。
だけど、本当は
「君じゃなきゃ。君とがいい。ううん、違う。君じゃなきゃ、駄目なんだ。君が、誰かのものになるなんて、耐えきれない」
私だって、揺れる金色の髪も、水色の瞳も、誰かのものになんて、なって欲しくない。
「僕の、奥さんになって欲しい」
「……っ」
「さようならは、僕らの命が尽きるときまで、とっておくよ」
そう言って、微笑んだ彼を見た私の世界は、もう、涙で滲んで、うまく見えない。
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