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雲もない、真っ青な空だった。
その日ひとりの男の子が生まれた。
彼が生まれた日、世界のあちこちで自然災害が起きた。けれどだれひとりとして、命を失う者はなく、何かを失う事もなかった。
人々は心を撫で下ろした。
けれど同じ日の同じ瞬間に世界各地で災害が起きるなんて不自然だと誰もが思ったに違いなかったが、みんな元の生活を生きていく事に思いがいっぱいだったので、いつの間にかそんなことは忘れ去られていた。
男の子の母親は、この子が生まれた瞬間に深い深い眠りについた。看護師は男の子を取り上げた時思わず息を飲んだ。彼のうっすらと生えた髪の色もうっすらと開いた目の色も青い海の色をしていたのだ。
産声はまるでさざ波のようなとても小さなものだった。
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