青が生まれる

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青が6歳の頃だった。 祖父が他界した。 癌だった。 たくさんの人が祖父のお葬式に参列した。 前日の通夜の夜、青は死んだ祖父の隣で眠った。薄暗い部屋で、ぼんぼりの光がくるくると回っている。まるで海の底の様な夜だった。青は小さな指で、祖父の顔や耳に触れてみた。あんなに暖かかった祖父の肌は白く冷たくなっていて、無機質なもののように感じた。とても不思議な感触だった。 「おじいさん。あなたは人の中でも1番に僕を可愛がってくれたね。母が眠ってからずっとね。僕が生まれて1番に喜んでくれたね。祝福してくれたね。僕はまたきっとあなたに逢えると思うんだ。だから悲しいなんて思わないけれど。それでもなぜかとても寂しいんだ。こんな気持ちになるなんて不思議だね」 青は祖父の逆光に光るまつげを見つめながら、氷のように冷たい身体に寄り添った。 棺の中にたくさんの色の花が添えられた。それはまるで誕生日の時に見た、色紙の紙吹雪のようだった。人々は立ち上がって涙を流した。青は真っ白い菊の花を一輪、祖父の紅を塗った白く冷たい頬の隣に置いてやった。祖父に触れた最後の瞬間だった。それは花の匂いで溢れていた。
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