第6章:無我夢中

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東名高速を進んで、 海老名サービスエリアで一旦止まり、 ホットコーヒーを二つ買い 車中でそれを飲みながら どこへ向かうか話していた。 「もう結構遅いし、箱根にするか。」 「ベタですね。」 「正直どこだっていいんだけど、 なんか目的地あったほうがいいだろ?」 「随分ロマンチストですね。」 そう沙織が言うと、 蒼弥は沙織のほおを親指と人差し指で掴み 「お前こそ随分生意気になったな。」 とわざと怒ったように言い、 顔を近づけ、唇をゆっくりと重ねた。 この瞬間を二人は待っていた。 サービスエリアで止まった理由なんて、 本当は飲み物でもなんでもなく、 ただキスがしたかった。 何度も何度も 軽く淡い優しいキスを繰り返す。 唇が少し離れるたびに溢れる吐息が 視線と共に交わる。 互いの熱を確認し合うと、 目を瞑り 今度は舌を絡ませる。 じっくりと味わうように。丁寧に。
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