第1章:10年ぶりの再会

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「あ、河本、その撮影なんだけど、」 香山は少し目を細め 申し訳なさそう沙織を見ながら続けた。 「ほら、今、内田が今いないでしょ、 他のみんなも他の取材や撮影で忙しくて・・・ 土曜日なんだけど、あなた出られるかしら?。」 内田は沙織の上司で、 先週階段から足を踏み外し脚を骨折し、 今はリハビリのため入院している。 上の子の育児休暇を取った後から 勤務形態をパートタイムにしたとは言え 沙織は新入社員で文花社に入社した時からビジュール編集部配属なので 頼られることも多い。 元々は文学が好きで 文芸編集希望で出版社に入ったが、 女性誌に配属され、 もう12年もやっている仕事に 今ではやりがいを感じ誇りを持っている。 何より、おしゃれ好きな少しオマセちゃんの 小学1年生の娘にとって ファッション関連の仕事をしている母親は 自慢らしく、 そう思ってもらえることも嬉しかった。 沙織は手元においてある手帳のカレンダーをめくった。 こういったリクエストは多々あって、 ほとんどの場合は 義昭の出張で出られない時の方が多いのだが、 今週末は今のところその予定もなく、 珍しく出られそうだ。 「主人の出張がないので大丈夫だと思うのですが、 一度確認してからのお返事でもよろしいですか?」 「ええ。もちろん。 あなたが来てくれると助かるわ。 撮影は、丸の内の和田噴水公園で朝6時半集合よ。」
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