第9章:戻れない

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「先輩喉乾いてませんか?」 「あぁ。冷蔵庫に、ペットボトルの水、アイスコーヒー、 あとはビールあるよ。」 「では、お水いただきます。先輩は?」 「じゃ、ビール。」 蒼弥は薄いタオルケットを羽織りながら キッチンへ向かう沙織の後ろ姿を 愛おしげに見つめた。 二人は喉を潤し、またベッドに横たわった。 沙織は仰向けになり天井を眺め 気になっていたことを聞いた。 「あの・・・ご家族とは別居されたんですか?」 同じく天井を見ていた蒼弥は 沙織に顔を向けた。 「そう俺、家出たんだ。」 「なんでですか。」 「沙織が好きだから。」 蒼弥は まるでそれが当たり前のことかのように そんなことを言った。 10年前、同じ部屋では聞けなかった 蒼弥の気持ち。 今になって聞くことが出来るなんて・・・。
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