第13章:夏休みの始まり

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しばらくして沙織は体を起こした。 部屋には蒼弥はいなく、 リビングルームに向かった。 もうすぐ日が落ちそう。 ベランダから入る赤い光にあたった蒼弥の横顔が 美しくて見惚れていた。 沙織の気配には気づいていたものの 仕事用のノートパソコンに向かっていた蒼弥は いいところで仕事をきりあげたくて 仕事を続けた。 ある程度片付けたところで 自分を見つめる沙織に 視線を返した。 「おいで。」 蒼弥はそういい 自分の膝に沙織を乗せた。 そして後ろからぎゅっと抱き締めると 「夕飯どうする?」 と訊いた。 「何か作りましょうか?」 「前よく作ってくれたオムライス。」 「分かりました。スーパー行かなきゃ。」 「一緒に行く?」 「でも・・・人目とか・・・」 「こんなとこに知り合いいんの?」 「いないですけど。」 「じゃぁ、一緒に行こう。」 「え・・・は、はい。」 2人は着替え、 外に出ると 蒼弥は 自分の後ろを歩くこうとする 沙織の手を握った。 沙織が戸惑いながら 蒼弥の顔を見ると 「何?」 と平然な顔をし、握力を強めた。 過去何度も一緒に この家から外出したことがあったが、 一回もこうして歩いたことはないし、 沙織は常の蒼弥の後ろを歩いていた。 今、お互い既婚者で、 こうして会っているいることですら 本来は許されないのに こんなに堂々としている蒼弥に 沙織はハラハラさせられるが、 本心では 嬉しくてたまらなくて それを拒むことは出来ない。 二人は 沙織が一人でよく通っていた 懐かしのスーパーに行った。
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