第13章:夏休みの始まり

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ご飯を食べた後、 二人は一緒に風呂に入った。 狭い湯船の中で沙織を背後から抱きしめ、 蒼弥は耳元にそのままの気持ちをぶつけた。 「ここに住まないか? いや、ここじゃなくても もう少し広いところで 一緒に住もう。」 「え? ・・・先輩、それはなんでも・・・」 「子供なら、連れてくればいい。 沙織の子供なら愛せるかもしれない。」 「そんな無責任な・・・」 蒼弥は沙織を自身の方に向かせ、 腿の上に座らせた。 「じゃ、どうすれば、俺だけのものになんの? 毎日沙織を感じられる生活が欲しいんだ。」 そういうと、沙織のほおを愛しそうにゆっくり撫でた。 「他の男のためにこうやって料理したり 尽くしたりする沙織のことを考えるだけで おかしくなる。」 「・・・」 「な?一緒に暮らそう。」 自分にここまで必死のなる蒼弥を 10年前の沙織ならば 想像すらできなかった。 蒼弥が愛しい。愛しくてたまらない。 だけど だからこそ どうしたら良いのか分からない。 「先輩・・・お願いです。 考える時間をください。」 「ダメ。すぐネガティブに考えるから。」 蒼弥は沙織の首に息を吹きながら唇を当てた。 「アァっ・・・ンっ」 「あぁ、じゃなくて、 はい、だろ?」 その夜は 蒼弥は沙織の本心を探るように、 沙織は自分の答えを探すように、 朝になるまで何回も体を重ね、 決定的な何かを見出せないまま 日の出とともに眠りについた。
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