第15章:幸せに近づく

4/10
前へ
/226ページ
次へ
その後沙織も出勤した。 オフィスにつくと、 内田が今週いっぱい休みを取っていることを知った。 最近のとくに若い子たちは 憧れで出版社に入る子が多いが、 多忙さに耐えられなくなり離職者が多い。 そんなこともあり、 ただでさえ人手が足りないのに、 内田の仕事がほぼ沙織に回ってくるはめに。 今日はまず 土曜日に撮影したメンズファッションの写真を セレクトしなければならない。 フォトグラファーから送られてきた写真を一枚一枚選別する。 その中には蒼弥の写真もあった。 自分が選んだ服を着る蒼弥を見ると すごく不思議な気分になる。 今一番近くにいるはずなのに、 何度見ても見慣れないほどの美しい姿に 実は全てが夢なのかとすら思う。 10年前考えもしないようなことが 今起きている奇跡。 それに甘んじていいのか、 沙織は自問していた。 ぐずぐずしていたら またいつ自分の元から いなくなってしまうかもしれない恐怖心は トラウマのように常にある。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1256人が本棚に入れています
本棚に追加