第2章:それぞれの不満

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「文花社ビジュール編集部の河本です。 この間は撮影のご協力どうもありがとうございます。 予定通りビジュール6月17日発売の7月号に掲載となります。 他何か質問などありましたら、 内田の方にでも、編集部の方にでも、お気軽にお問い合わせください。」 メンズの撮影から二週間がたち7月号のレイアウトも決まり 沙織は退院した内田に頼まれ 読者モデル達に掲載報告の電話をかけている。 その中にはもちろん蒼弥もいた。 なんとなく蒼弥への電話は最後に残していたが、 最後になり、かけなくてはならなくなった。 「お世話になっております。 文花社、ビジュール編集部の河本です。」 その後の文言も、 他の人と変わらぬように言っていったが、 緊張で声が揺らいだ。 「・・・沙織だよな?」 質問系だが、確信しているような強い声が受話器越しに聞こえる。 「は、はい。」 「そっか、河本さんになってたんだ。」 「それでは」 沙織がそう電話を切ろうとすると、 「待って。 今夜会えない?」 と蒼弥は言った。 「え・・・あ・・・ 夕飯の準備などもありますし無理です。」 「ふーん・・・じゃ、今からは?  あと20分で12時だし、 そろそろ昼休みでしょ?」 「え、いや、あの・・・」 「文花社の下にカフェあったよね?じゃ、そこで」 「で、でも」 「俺今からタクるから」 10年もの時は経っているなのに 断る隙さえ与えない 変わらぬ関係性を沙織は感じた。 受話器を耳元から離すと、 大きなため息をつき、 悩ましい頭を下を向けた。
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