第2章:それぞれの不満

3/16
前へ
/226ページ
次へ
ランチ前の化粧室は、いつだって混んでいる。 一仕事終えた後の息抜き、外出前の用足し、 それぞれの理由が 一気に集中する。 沙織はソワソワしながらも、 化粧直し用の鏡の前に立ち 赤みが強いピンクのルージュを引き直した。 隣でメイクを直している 20代女子と自分を 無意識に見比べてしまう。 スキンケアは怠ってはいないが、 若さにはどうしたって勝てない。 目尻にうっすら残るシワも、ほおに現れはじめた小さいシミも 普段はあまり気になっていなかったのに 急に気になり始め、 化粧ポーチの底にあるコンシーラーを取り出した。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1259人が本棚に入れています
本棚に追加