第2章:それぞれの不満

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12時過ぎのカフェには、人が次々と入ってきていた。 広くはない店内を見渡すと蒼弥の姿はまだない。 沙織はBLTサンドイッチとキャラメルマキアートを頼み 窓側の席に座った。 このカフェはよく利用するのだが いつもテイクアウトをしてデスクで食べることが多く 店内で食べたことはなかった。 同じ敷地なのに 1階からの景色とオフィスのある8階からの景色は 全く違うなぁ、と沙織は 外を見つめながら思った。 ちょうどそこに黒いタクシーが止まり、 それから降りる蒼弥を見つけた。 窓越しの沙織に気づいた蒼弥は口角を上げ 手を軽く挙げた。 その姿はビルに反射された太陽の光と重なり 眩しくて 視線をそらしたくなるのに 神々しくて 目が離せない。 店内へ入ってきた蒼弥は ネイビーのジャケットを脱ぐと、 沙織が座っている向かい側の椅子へ腰をかけた。 「ごめん、待った?」 「・・・いえ。」 「この間もだけど なんで そんなよそよそしいんだよ。」 「そ、そうですか?」 沙織は持っていたカップに口をつけた。 「何飲んでるの?」 「キャラメルマキアートです。」 「いいねー。 ちょっと俺も頼んでくるわ。」 蒼弥は、膝に置いていたジャケットを椅子にかけ、 注文するために、 長くなっていた列へと急いだ。 癖のように自然と蒼弥を目で追ってしまう沙織は 何かをして 気を少しでも紛らわしたくて BLTサンドイッチを頬張る。
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