第2章:それぞれの不満

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オフィスに戻ると、 いつも通り同僚たちが 談話しながら、デスクでランチを食べていた。 かき乱された心が、通常の空間に戻ってきたことで 少しばかりか落ち着く。 沙織が席に座ると後輩が話しかけてきた。 「河本さん、 この間の河本さんの知り合いのメンズの 読者モデルさんいたじゃないですか?」 「・・・え・・・あー・・・うん。 風間さん?」 なんともバッドタイミングな話題に冷静を装う。 「あ、そうそう。 ラズベリー編集部の同期から聞いたんだけど、 あの人の奥さん、ラズベリーの読者モデルらしいですよ。」 「へぇ・・・」 ラズベリーは20代前半の子をターゲットにしたファッション誌だ。 「インスタやってるっていうから見せてもらったんですけど、 ほらこれこれ。フォロワー数結構多いんですよ。」 吉永麗華、24歳。 「めっちゃ若いですよね。」 「そうね・・・って あなたとあまり変わらないじゃない」 「4歳も年下ですよ。」 投稿されている写真の数々に映るのは 長身、細身の誰が見てもモデル体系の美人だった。 顔は面長で鼻が高く、 黒髪のストレートヘアーは腰まであって 表情は自信に溢れている。 「美男美女夫婦なんですね。」 「そうね。」 嫉妬、憧れ、不快感、 全てあてはまるようで、全て違う複雑な気持ちを抱えて スクリーンを見ていた。 スクロールダウンしていくと 可愛い小さな男の子の写真も出て来た。 その子が写ったアメリカのキッズブランドの広告も投稿してある。 「お子様もキッズモデルされてるみたいです」 綺麗な読者モデルの妻、 可愛いキッズモデルの子供、 華やかで自慢できるような家族を持っている蒼弥。 自分は、 揶揄われてるんだな、と 沙織は思い、 ほっとした反面 でもどこか虚しさを感じた。 ◇
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