第2章:それぞれの不満

8/16
前へ
/226ページ
次へ
日本橋の文花社ビル前でタクシーを拾った蒼弥は 六本木までの車中、 30件の未読の表示があるラインのアプリを開いた。 30件全て妻の麗華からのメッセージだった。 内容は、仕事帰りに買って来てほしいもののリスト。 毎日のことだ。 「一件にまとめろよ」 蒼弥はイラつく心中を つい独り言で吐き出した。 そこにまたメッセージが入った。 「今週の土曜日、例の女子会でまた出かけるので、 蓮をよろしくね。」 麗華が出かけることは どうでもよい。 けれどまだ2歳の蓮を自分だけに任せ、 家での仕事の邪魔や、自由を奪われることが 苦痛でたまらなかった。 だからといって、 それに対して反論するほうが 面倒くさいと 蒼弥は 「わかった」 と打ち、スマホから目を離した。
/226ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1259人が本棚に入れています
本棚に追加