第2章:それぞれの不満

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その夜は仕事を早く切り上げ 六本木ヒルズの下にあるバーで ショットを飲むようにジントニックを2杯飲み干し帰宅した。 息子の蓮は いつもは麗華と一緒にベッドルームを占領しているのだが 排卵日だけは リビングルームにあるベビーベッドで寝かされる。 「シャワー早く浴びてきて」 家に着くなり 「おかえり」ではない言葉が待っていた。 スーツを廊下に脱ぎ捨て 腹立たしく思いながら風呂場へ向かう。 目を瞑り上から降ってくる湯気が出るほどの湯で 疲れと同時に怒りも流した。 性欲がないわけではない。 ただ麗華にだけは どうしてもそれが湧いてこないのだ。 「沙織」 目を瞑りながら、 その名前を口にし 彼女の表情一つ一つを思い返す。 触れた肌の柔らかさを思い出す。 「はぁ・・・」 そうして体の準備をし、シャワーを出た。
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