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外は少し肌寒かった。
「沙織・・・」
「先輩・・・」
沙織はベランダに置いてある椅子に腰をかけた。
沈黙の遠くで自動車が行き交うような騒音がした。
「外ですか?」
「うん。歩いてる。沙織は?」
「私もベランダにいます・・・。」
「会いたい。」
「なんでそんなことばっかり・・・」
「沙織が 俺の押しに弱いこと知ってるから。」
「読者モデルの
綺麗な奥さんだっているらしいじゃないですか」
「あぁ・・・知ってたんだ。」
「今日、会社で耳にして・・・」
「ふーん。
まぁ、そうだな、綺麗だよな。」
「・・・」
自分で言ったことなのに、
蒼弥から帰ってきたその言葉にチクリと胸が痛む。
「でも俺たち、求めるものが違いすぎて
噛み合わないんだよ。」
「どう言う意味ですか・・・」
「沙織なら、分かるだろ。」
沙織は蒼弥の言っていることが
分かるようなきがした。
・・・いや、分かった。
けれど
それは口にしてはいけないような気がして、
口を閉ざしたままにした。
「俺、どこで間違えたんだろう。」
そう呟いた蒼弥の声は
ちょうど吹いた風で沙織にはうまく聞こえなかった。
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