第1章:10年ぶりの再会

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ワーキングマザーの河本沙織の朝は早い。 夫と子供達が起きる前に朝食を作り 彼らが起床し それを食べている間に自分の身支度をする。 ファッション誌の編集者として 常に服装には気を使っている沙織は どんなにバタバタしている朝でも この時間の気は抜かない。 161cmの51kg、 痩せ過ぎでもなく太り過ぎでもなく 34歳にしてはプロポーションを保った体型なので 基本どのような服でも合い、 トレンドに合わせ様々なスタイルを楽しんでいる。 ただし靴だけは 妊娠中と子育て中にフラットシューズに慣れてしまったため、 3cmヒールが限界だ。 奥二重で、唇は薄く、派手な顔の造りではないので、 メイクは簡単なナチュラルで仕上げる。 アイメイクも目蓋に ブラウン系のアイシャドーを塗って 軽くマスカラをつけるだけ。 リップは化粧品会社から 毎シーズン送られてくる数々のトレンド色の試供品の中から 少し色づいたものを使う。 30歳をすぎてからだいぶ血色が落ち 色味あるほうが綺麗に見える。 髪は、胸まで伸びた栗色。 少し癖があるので、いつも後ろで一つに縛り クルリンパという結い目の上を二つに分け 縛りまとめた髪をその中に入れて、くるりんとひっくり返すという 兼業主婦にはもってこいの簡単な手法でお洒落に見せている。 身支度を終えた沙織が 夫や子供が使った食器を 片付けていると 「じゃあ行ってくる。」 と義昭の声が玄関の方からした。 沙織は見送りのために 家事を一度中断するし 玄関に向かう。 義昭はランドセルを背負った子供たちの持ち物の最終確認をしていた。 義昭は出張が多いので 家事や育児は沙織が中心としてすることが多いが 家にいる時は やれることは積極的にやってくれるので助かっている。 「よし全部持ったな。」 学生時代バスケ部に入っていた義昭は 178cmと平均よりは身長も高く、 肩幅も広い。 年齢は40手前で、 出会った頃よりも多少肉付きたるみはしたが 沙織が選んだスーツが体に合い、良く似合っている。 「いってらっしゃい!」 「行ってきます!」 一気に三人を送り出した後、 沙織は食器などをある程度片付けてから 家を出た。 パートタイムで 労働時間もコアタイムを含めれば自分で選べるので 早朝の通勤ラッシュからは 少し外れた時間に電車に乗り、 日本橋にある総合出版社『文花社』に出社した。
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