第9章:戻れない

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沙織にとって10年ぶりに訪れた部屋。 「懐かしいですね。」 「だろ?」 「家具はないんですね。」 「寝るとこだけはあるよ。見る?」 そういうとベッドルームへ案内した。 10年前まではシングルベッド、本棚、机があった部屋に クイーンサイズのベッドが ドンっと置かれていた。 「大きくなってますね。」 「昔みたいに沙織とくっついて寝るのもよかったけどな。」 「ふかふかそうですね。」 蒼弥がベッドに腰を下ろした。 「おいで、沙織。」 昨日義昭が言ったセリフとほとんど変わらないのに どうして 蒼弥から発しられた声には こんなに感情が高ぶるのだろう。 沙織は倒れこむように、蒼弥の腕の中へ沈んでいった。
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