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「先輩、やめてください・・・」
「ちゃんと答えるまで行かせない。」
「してないです。」
「嘘だ。ちゃんと、俺の目見て言え。」
「してません。」
縛られた沙織の手首を抑える蒼弥の腕は微かに震えていた。
スヌーズ機能が発動し、またアラームが鳴った。
蒼弥は沙織から手を離したと思いきや、
沙織携帯の電源を切った。
そして、また沙織の手の自由を奪うと
沙織の首筋を歯型がつくほど噛み付いた。
「あぁ、痛い。
ダメ・・・。
これじゃ、帰れないじゃないですか。」
「帰らなくていい。ずっとここにいればいい。」
「先輩・・・。」
「お前は俺のこと、好きじゃないの?」
いつも強気な蒼弥が発する
弱気な言葉に
沙織は一瞬耳を疑った。
「・・・じゅ、10年前には戻れないんです。
10年前に無かった大切なものが今はあって、
そんなすぐに全てを捨てられません。」
沙織の否定的な言葉を聞いて、
蒼弥は沙織の腕に巻き付けたケーブルを強く絞めた。
「先輩」
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