第9章:戻れない

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「先輩、やめてください・・・」 「ちゃんと答えるまで行かせない。」 「してないです。」 「嘘だ。ちゃんと、俺の目見て言え。」 「してません。」 縛られた沙織の手首を抑える蒼弥の腕は微かに震えていた。 スヌーズ機能が発動し、またアラームが鳴った。 蒼弥は沙織から手を離したと思いきや、 沙織携帯の電源を切った。 そして、また沙織の手の自由を奪うと 沙織の首筋を歯型がつくほど噛み付いた。 「あぁ、痛い。 ダメ・・・。 これじゃ、帰れないじゃないですか。」 「帰らなくていい。ずっとここにいればいい。」 「先輩・・・。」 「お前は俺のこと、好きじゃないの?」 いつも強気な蒼弥が発する 弱気な言葉に 沙織は一瞬耳を疑った。 「・・・じゅ、10年前には戻れないんです。 10年前に無かった大切なものが今はあって、 そんなすぐに全てを捨てられません。」 沙織の否定的な言葉を聞いて、 蒼弥は沙織の腕に巻き付けたケーブルを強く絞めた。 「先輩」
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