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私は立ちあがると、サンダルを脱ぎ海に向かって投げた。それを見てSも同じことをした。
「なんで俺らは生きているんだろうな?」
「生きたい人間は死ぬんだよ。でも、生きるのを諦めたらいつまでも生きなきゃいけなくなるんだよ」
もう三十回以上された質問に同じ数だけした返事をした。
「死んでるように生きるのが長生きの秘訣ってわけね」
気がつけば空は焦げ付いたみたいに暗くなっていた。
「じゃあ、飛ばそうか」
Sがカバンからカバンから青色のネジとロケット花火と輪ゴムを取り出した。
「でた、青空のネジ」
私の言葉にSが笑う。空が晴れなくなってから、いたるところに散らばり出した青いネジ。私たちはこれを青空のネジと呼び、空にかえす作業を暇つぶしにしている。
「ちゃんと届くかな?」私はロケット花火に目をやる。
「さあな。でも、もう五十回以上は飛ばしているからそろそろかもな」
「まだネジが足りないのかな?」
「それか空の上の作業員がサボっているか」
「もしくは青空の張り紙をなくしたか」
「どれだろうな?」
「どれでもいいよ、晴れさえすれば」
「だな」
Sが青空のネジを砂浜に突き刺したロケット花火に輪ゴムで括り付け、ライターで導火線に火をつけた。花火は悲鳴のような音を上げ、夜空に消えていった。
「気休めだね」
私の言葉にSが無言でうなづく。
「明日こそは晴れるかな?」
「さあな」Sが吐き捨てるように言った。
「そうだね」
またどこかでピストルの音がした。
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