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外はよく晴れているようで、日の光が店の前の道路に当たって、白っぽく輝いていた。そこを繰り返し、右から左へと、車が走りすぎて行く。
たぶん、きっとこれまで、何百回もこの場所から見てきた、そんな一つの風景だと思う。
そしてそれはたぶん、これからも永遠にーー私が今後、子供を産んでも、その子供が大きくなっても、私がおばあちゃんになっても、そして私が死んでもーーきっとずっと、続いていくものなのだろう。
私は軽いめまいのようなーーそんなものを覚える。
たまらず目を戻すと、彼のジャケットのポケットのあたりを、もう一度眺め見た。そこには、多少の膨らみがあった。
彼は、ハッキリとは答えなかったが、やはりそこには、何かがいるのだ。
彼を見ると、何か妙に確信に満ちたような目で、じっと私の顔を見ていた。さっきまでのシュンとした感じとは、なぜかまるで違っている。
私はつい、彼に聞いてみたくなった。
「あの」
彼は首をかしげた。
「はい」
「なぜいつも、ポケットに蛙を入れているんですか?」
「……」
彼は私から目を離すと、軽く俯いて考えた。
「特に蛙、って決めている訳ではないんですよ」
「えっ?」
私は目を丸くさせた。
「そうなんですか?」
「ええ。たまたまその時、蛙だった、ってだけです」
ふたたび湧き出てきた唾を飲み込んだ。
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