不完全な人間たち

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 じっと、彼の顔を見た。でもなぜか、その時はもう、不思議とさっきみたいな気後れは、いっさい感じなくなっていた。 私は小さく咳払いをすると、 「その、ジャケットのポケットの、蛙のことなんですが」  と、言った。  なるべくフラットに聞こえるように、口にしたつもりだ。でも確かに、少し言い方がキツくなってしまったのかもしれない。 いまだに悔やんでも悔やみきれない。こういうのって、本当に難しい。でも、自分は決して、彼を責めるつもりでそう言ったわけではなかったのだ。 「えっ? ああーー」  彼は頬杖をやめると、苦笑いをしてぽりぽりと頭を掻いた。  途端に何かしおしおとした様子で、彼は小さく縮こまると、申し訳なさそうに肩をすくめた。もちろんただ、私の前ではそんなふりをして見せただけなのかもしれない。 でも、私はそれを見て、途端にまた後悔するような、そんな気分になったのだ。  しばらくの間、互いに沈黙が流れた。彼は私から目を離すと、キーボードの上で両手を組み、考えごとをするようにしている。私はふいに喉元に湧き出てきた唾を飲み込んだ。  と、急に彼の方から、口を開いた。 「あなたは……」 「えっ?」 「蛙が、お好きなんですか?」  慌てて、彼の顔を見た。 「え、私が、ですか?」 「ええ」 「……」
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