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少し丸っこくて、キラキラと濁りなく輝くような目が、非常に印象的だった。眉の生え方も、なかなか良いものだ。
着ていた黒のカットソーの袖が下りてきたのを捲り上げると、私は喉元に湧き出てきた唾を飲み込んで、つけていた麻のエプロンの前で両手を組んだ。手は軽く汗をかいている。
「でも……確かにそうですね。お店の迷惑になりますね」
彼が言った。私はその顔を、じっと見つめた。
「逃げたりしないよう、あるいは人目に触れないようにしていてくだされば、問題はないと思うのですが。ただ、今までに何度か、カウンターの上に出されていましたよね」
彼は何度も頷くようにした。
「ええ、ええ」
「それですとやはり……」
「はい。わかります。おっしゃる通りです」
「うちは、女性のお客様も多く見えますし、そういうのを不快に思う方も、きっとみえると思いますので」
流れるように注意のセリフを口にしながらも、私はどこか、何か違うものをーーしきりに感じていた。これは、なにか違う。それは、うまく言葉に出来ない。それまでに感じたことのない、奇妙な違和感のようなものだ。
何て言えば、いいのかな。
彼から視線を外すと、私は目を細め、店の中を見渡した。
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