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「いい? お願いね? だって店長がいない日は、私がその代理なんだもん。あんなの放置してるの、バレたらヤバい」
「それはまあ……」
私は男性が取り出した蛙の、美しいあの緑色を、しきりに思い返していた。いまだにどこか納得のいかないような、そんな思いでいると、じゃあよろしくね、と綾は気軽に切り上げるように言った。
それから突然、
「あ、そうだ瑠璃、これからご飯行かない?」
「ご飯?」
「いい感じのイタリアンが、最近駅近にできたんだよ。知ってる? おごってあげる」
私は大きくため息をつくと、呆れた顔で綾を見た。綾はただ、ニヤニヤと妙な顔で笑っている。
返事ともつかないような、そんな曖昧な答えをムニャムニャと返すと、綾は私の手を取り無理やり引っ張って、自分からどんどんと先に歩き出した。
3
気だるいような、そんな平日の、午後の時間。
カウンターの中で、ずっと洗い物をしていると、ともすると私には、時間の流れが普段よりも、ひどくゆっくりなものに思えてくることがある。
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